間違い電話

昨日マイソールクラスが終わって家に帰りつき、いつものように珈琲を飲んでちょっとお菓子を食べたら、スイッチが切れたように眠くなり、昼寝、ならぬ朝寝していた。

最近は朝がマイソールクラスだけだと、家に帰りついたら本当にスイッチが切れたように眠くなり寝てしまう。ほんの2、30分ほどだけど、目を開けていられずにいられない。

うっかり寝過ぎたら夜眠りにくくなるからタイマーをかけて寝るのだけれど、眠りにおちてたら、タイマーをかけていた携帯のバイブ音が鳴り、もう時間になったのかと携帯をとったら、前職の上司であり同僚でもあった人からだった。

もう退職して2年以上も経つのに何かあったのかと電話にでたら、単に間違い電話だった。上司で同僚といってもその人は定年退職後の第2の職場で私の職場に来た人だからもう軽く70歳は超えている。 私と一緒に働いていた時にもすでに70歳越えしていたから今頃は75歳くらいだろうか。。

そんなお年だから携帯の電話番号検索で間違えてもしょうがない。 聞けば職場の事務所に電話しようとして間違えたと。 今もまだ現役で頑張って働いているらしい。

「どう?元気でやってる?」と。声を聴く限り私がいた頃と変わらず声にはりもあって活舌もよく全然老け込んでいる感じがしない。 以前から異様に年をとらない驚異的に若さをキープしている人だったけれど、今もまだ健在のようだ。

「はい。 今はヨガのインストラクターをやっています。 事務職にはもう戻れないかもしれないです。」

と答えている自分がいた。 前職を退職した時、その人より先に辞めてしまうのに少し気が引けていた思いもあった。 経営が危機的状況にあり、正社員が3人しかいない小さな職場でどんどん経営状態が悪化していく中、自分がトップではないので、1事務職員の私にできることが限られていて、どんどん悪化していく状況を見ているだけでも精神的ストレスが大きくなっていった。仕事のアイデンティティと自分のアイデンティティを同一視してしまっていた中で、心身ともに疲れ切ってしまい、もう手放そう、と決意したものの、17年も携わってきた仕事には思い入れも愛着もあって、退職する決心をするまではとても苦しんだ。でもその決意をした後はまるで憑き物が取れたように私はすっきりしていた。

3人いた中で2人退職して1人残ったその人は新しいトップと私の後任者と今も働いているその人には気の毒なことをしたなぁ、と思うこともあったけれど、あの時は自分が窒息しないことを考えることしかできなかった。

ヨガのインストラクターで頑張っていることを伝えたら、「良かったなぁ。自分が好きなことをやるのが一番やもんな」と言ってくれて、そして「あの時は経営状態が瀕死状態だったけど、今は大幅なコスト削減もして、なんとか赤字を出さずにやっていけている」と聞いて、あの時感じていた心に刺さっていたとげが取れたような気がした。

前職を退職してからフリーランスのヨガインストラクターとなってみて、改めて前職での経験が一見関係なさそうな今のヨガの仕事にとても役立っているとしみじみと実感している。小さな組織だったからこそ経験できたこと、様々な業務は今のインストラクターの仕事に役立つことがとても多くて、 まるで今の仕事をやっていく上で困らないように訓練を受けていた準備期間だったのかな、と思えるくらいだ。

あの時の経験があったからこそ今の自分がいる。あの時苦しんだり悩んだりしたからこそ、今の仕事を心から感謝して取り組むことができている。

やっぱり人生に無駄なことなんて何もないんだな、と思う。

寝ぼけまなこで昔の上司からの電話をとったことで、ふと改めて今の状況の自分のことを振り返ることができた。

安定した組織に守られて定期的にお給料をいただけて有給休暇ももらえていた時より、今のほうが圧倒的に不安定だし収入も激減して 組織に属さず、むき身の私だけで立っているから、よく心配症で不安になりがちな私がやっていってるな、と我ながら思うけれど、今のほうが心から幸せだと思えている。

40歳を迎える年にした人生の大きな決断から2年以上が経過し、あの時の決断は間違ってなかったよな、と改めて思う。

また5年、10年と経った時にもあの時の決断はやっぱり間違っていなかった、と思えるように頑張っていこう。

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